改正民法第621条には、
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。
ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
と現状回復義務が明記された。
店舗閉鎖での退去時に、
この原状回復費用を過剰請求されるケースが多発している。
民法の改正前にも原状回復義務を巡っては様々なトラブルがあったが、
改正後も変わらないようだ。
オーナーが施工業者を指定するのが慣例で競争原理が働かず、
適正金額より3~6割高く請求されることがある。
原状回復を機にビルのグレードアップ改装を狙う所有者もおり、
過剰請求が発生しやすいのである。
第三者による査定が重要になると思われる。
国土交通省は、
個人間の賃貸借契約においては、
「経年劣化や通常の使用による損耗などの修繕費用は、原状回復には含まれない。
これらの費用は賃料に含まれるものであって、賃貸人の負担すべきものになる」
という解釈を掲げている。
一方、、オフィスやテナントの原状回復についてに指針は掲げていない。
事業者間の商取引なので、当事者の協議による契約や商慣習で決まるのが
現状である。入居時の契約で現状回復の範囲があいまいなことも多く、
退去時の過剰請求につながっているのである。
新型コロナウイルス感染の長期化でオフィス縮小や店舗閉鎖が相次いでいるなか、
現状回復とういう予想外の負担を負わされるケースが多発しているのは、
国土交通省による、
オフィスやテナントの原状回復についてのガイドラインが
早急に掲げられることを望む。
(日本経済新聞 2020年9月6日 朝刊 参照)